政治家たちの批判のための批判 (2)



これは(2)です。政治家たちの批判のための批判 (1)から読むのをおすすめします。



○ 協力しない野党自民党

 こうしたことは民主党側ばかりではない。自民党側の罪も大きい。

 自民党は、従来から消費税10%を主張していた。実際には10%では全く足りないと思うが、とりあえず、避けることのできない政策であり、多少なりとも責任感の感じられる提案である。一方、民主党は、2009年の総選挙前、人気取りのために、消費税は4年間上げないと言っていた。これでは国は危機的な状況になるばかりである。ところが、2010年の参議院選挙前から、菅首相も消費税10%を言い始めた。まことにけっこうなことである。そして、これは、本来、自民党にとって大いに歓迎すべきことのはずである。自分たちが必要だと考えている政策を、実現できる絶好の機会がやってきたのだ。税金を上げるというのは、一般に国民は嫌がるので、なかなか実現するのは難しく、そういう機会はなかなかやってこない。政党も、支持を失いたくないため、無責任に、増税反対などと言いがちである。そうした中、税金を上げられるまたとない機会がやってきたのである。当然、協力してどんどん進めるはずの場面である。ところが、自民党は、協力するどころか、民主党の言う10%と我々の10%は中身が違う、などと言って、協力しないのである。国の将来を本当に考えているなら、そんなことは言っていられないはずである。くだらないことこの上ない。

 そして、東日本大震災の後、菅首相側は、自民党に、内閣に加わるよう求めた。これも、野党の自民党にとっては、自分たちの政策が実現できる絶好の機会のはずである。(もちろん、政策を実現できる機会であるばかりではなく、かつてない大きな災害だったのだから、表面的な対立などしている余裕は全くなく、どんどん復旧策と復興策を実現していく必要があった。)それなのに、自民党は、そんなことをすると民主党政権を利することになる、などという利己的な理由で政権に加わらず、批判を続けられるポジションを確保するのを選んだのである。さすがに、怒りを感じた国民も多いだろう。


○ ばかばかしい外国人献金問題

 批判のための批判には、他にもいろいろある。

 外国人献金問題の追及もそれである。
 2011年3月に、前原外務大臣が、外国人から献金をもらっていたということで、辞任に追い込まれた。その後、菅首相も外国人から献金をもらっていたということで野党から徹底的に追及され、2011年9月には、野田首相の外国人からの献金も明らかになった。野党は喜び勇んで追求に走る。だが、こんなことは、いちいち徹底追及すべき問題だとは到底思えない。
 もちろん、外国人からの献金は禁止されており、そこにはそれなりの理由がある。そして、法律で決まっている以上、守るのは当然ではある。だが、多くいる支持者の誰が献金をくれたのか、いちいち確認することは難しい。しかも、在日朝鮮人・韓国人の中には、日本名を名乗っている人も多く、国籍を明らかにしていない場合などは、誰の国籍が日本人でないのかを知るのも難しい。外国の政府や組織の手先となって、資金的援助を受け、日本の政治をその国の都合のよいように動かそうとしているのなら、もちろん大問題であり、徹底的に追及されるべきであろう。だが、ここでの問題はそんな大それた問題ではない。献金をもらっていた政治家自身も、外国人から献金をもらっていたとは全く認識していなかったのである。こうした小さなことを、さも大問題であるかのようにあげつらい、国会の審議を止めていちいち追及するのは時間の無駄であろう。悪質性はきわめて低いし、どの政治家に、そのような献金者がいるかわからない。そんなに追求したければ、第三者機関を作って、全ての国会議員の献金者を調べればよい。恐らく、追及している側も含めて、続々と該当事例が見つかることだろう。


○ くだらないにもほどがある年金未納問題

 さらに、過去を振り返ってみれば、2004年にメディアをにぎわせた年金未納問題というものもあった。福田官房長官はこれにより辞任した。だが、これも、外国人献金問題以上に非常にばかばかしい。年金を意図的に払わなかったのであれば、もちろん政治家として大問題である。しかし、あのときの年金未納問題というものは、職業を変える際などに、手続き上のミスなどで、一時的に払わない期間があったというものであった。また、例えば、国会議員では議員年金に加入するが、実際には公的年金にも同時に加入していなければならないのだが、それを知らずに払っていなかった、などである。本人たちも気づいていなかったわけであり、これも悪質性はきわめて低い。最初の頃は、未納三兄弟などといって、当時与党だった自民党の閣僚たちを嬉々として追及していた民主党からも、その後、続々と未納の事実が発覚した。そして、自民党、民主党だけでなく、公明党、社民党、共産党の議員も含め、年金未納の議員の数は数十人以上となった。そればかりか、これを問題だとして追及していたニュースキャスターなどからも続々と未納が発覚し、筑紫哲也、安藤優子、田原総一朗なども未納の事実が明らかになり、番組出演を自粛するキャスターも現れた。
 繰り返すが、これは意図的ではなく、事務的なミスで年金を一定期間払っていなかったというものである。悪質性がある不正なら、徹底して追及すべきだが、こんな事務的ミスに類することを嬉しがって追及したりするからそんなことになるのである。これが追及するに足る問題でないことくらい、追及している人々もバカではないのだから、わかっているはずである。追及する価値がないことを知りながら、相手を貶めたり、批判するポーズを見せたいがために、こんなことを追及するのが問題なのである。
 こんなことを喜び勇んで追及した政治家も、こぞって批判したメディアも、こんなことで国民の年金不信を、無意味にあおった罪は重い。そんなことをすれば、国民の年金未納率はさらに上がることになる。そうした無意味な追及行動、それによる審議時間の浪費、そして、それがもたらした政治不信・年金不信こそが、真に批判されるべきことなのだと思う。


政治家たちの批判のための批判 (3)に続く!



光太
公開 2011年9月13日

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