リーガルハイ (第2シリーズ) (2)



これは(2)です。「リーガル・ハイ (第2シリーズ) (1)」から読むのをおすすめします。



○ 第6話

 第6話では、実質上の一妻多夫の生活をしている人たちが登場する。
 個人的には、今の結婚制度にはそもそも問題が多く、多様な形態が認められてしかるべきであると常々感じているので、このケースでは、最初から、一妻多夫の生活をしている人たちが勝てばいいと思っていた。
 古美門の言う通り、一夫一婦制は、社会の安定のために生み出された要素があり、キリスト教文化の影響によって成立してきたものである。そして、これも、古美門も言及していたが、一夫一婦制により、様々な不幸な関係や事件が発生している。だから、自分は、この制度には反対である。
 しかし、一方で、一妻多夫、多妻一夫、多妻多夫制があまりうまくいかないという実証的研究もある。詳しい議論は省くが、人間には独占欲があるためである。
 このドラマでは、その両者の観点を、うまく描いていたと思う。
 個人的には、やっぱり一夫一妻制がいいよね、という終わり方になっていない点には好感を持った。


○ 第9話

 第9話は、安藤貴和の裁判であったが、世論が死刑を望んでいるような状況で、古美門たちは、貴和の弁護を行った。
 事件自体はかなりバカバカしいように思うのだが、この裁判の中で、非常に重要な論点が論じられていた。

 それは、裁判と世論の関係である。

 古美門は、裁判所に民意を持ち込んではいけない、と訴えていた。これは、非常に重要な観点を含んでいる。
 悪人に必要な刑罰を与えるのはもちろん重要なことだが、多くの人が疑わしいと思っているからといって、裁判が、それを受けて有罪にするのは明らかにだめである。
 さすがに、それくらいのことは、誰でもわかるだろう。

 しかし、2009年に始まった裁判員制度は、民意を反映するいいシステムなのか?といったことは、いい面も悪い面もある微妙な問題だろう。古美門の言葉は、裁判員制度の根幹にも関わる問いでもある。

 また、多数派が、一定の方向に流れるときの危険性も古美門は指摘していた。
 第2次世界大戦中の日本でもそうであった。国家に洗脳された多数派が、国家が反戦の考えを持つ人々を拷問にかけるのを許し、国家のみならず、一般の人々までもが、ただ戦争はいやだと口にした人々さえ弾圧した。
 そして、2004年には、イラク戦争の時の3人の人質を、日本社会は、ひどく非難した。3人がイラクに行ったのはは、高い志を持って行っていたことなのに、日本社会は、彼らが日本に迷惑をかける身勝手な人々であるかのように非難した。

 この裁判での古美門の主張が正しいかどうかはともかくとして、古美門の発言には、非常に重要な問題が含まれていた。


○ 最終話(第10話)

 最終話(第10話)だが、最後にこういうことを書くのは非常に残念なのだが、全く失望した。
 黛弁護士は、結局、(それが事実であれどうであれ)ねつ造をするような人物に成り下がった。そして、最後は、事件の本当の真実は全くわからないというような、非常に納得しがたい終わり方になっていた。極度に質の低い映画やドラマによくある終わり方である。もしも、そうした物語の作者たちが、そのような終わり方を、視聴者に謎を残す高尚・深淵な終わり方である、などと考えているとすれば、浅はか極まりない。むしろ、それくらいしか意味ありげに物語を終わらせる方法を考えつかなかったということであり、発想の貧困さを表しているにすぎないと言えよう。

 このドラマは、物事は、一見して見えているものとは違う真実を持っている、何でも疑え、というようなコンセプトがベースになっている。
 そして、上でも述べてきたように、いろいろな問題の非常に重要な側面を提起している場合も多い。だから、このドラマは全体としては評価に値する。

 しかし、この最終回は、ありえないほどの駄作であった。

 これでは、不正な手段を使ってでも、お金や裁判での勝利記録のために勝つことが、まるで本当に何の問題もないかのような終わり方である。

 そして、羽生弁護士のように、不完全ではあっても、理想を持ってがんばっている人間をただただバカにし、貶めるだけの終わり方になっている。

 古美門のやり方は、(少なくとも描かれている範囲では)一見、身勝手に見えるが、裏には思いやりがあったり、人助けがあったりというのとは全く違う。
 黛弁護士も、最初に持っていた志などほとんど忘れてしまったかのように、お金と勝つことにしか目的としていないような古美門弁護士に協力し、ずっと慕っているように見える。
 こんな終わり方を誰が考えたのだろうか。
 ばかばかしい。

 まさか、リーガルハイの視聴者までをも、最後に裏切りたかったのだろうか?リーガルハイはいいドラマだと思って見ていたかもしれないが、実は全くの駄作で見る価値もなかったのだ、バーカ。ヘッヘッヘ。
 いくら何でも、そこまで体を張って、視聴者の意表をつくことはない。

 最終話を見終わって、あまりの駄作ぶりに怒りがわいてきた。


○ 最後に

 せっかく、いろいろな問題を多面的に描くすばらしいドラマだと思っていたのに、最後は本当にがっかりした。

 問題を多面的に描くには、かなりの考察が必要で、社会問題などにもかなり精通していないとできないだろう。このドラマで、そのように問題が多面的に描かれているのは本当におもしろく、非常に高いレベルのものも多い。今後も、いいエピソードが次々に作られていくことを期待したい。

 だが、最終話をこんなものにしてしまったことは、大いに反省してほしいと思う。
 そして、今回の最終話の失敗を挽回するような、すばらしい作品が、今後も作られることを期待している。


(完)

光太
公開 2014年9月15日

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