Dr. 倫太郎 (2)



これは(2)です。「Dr. 倫太郎 (1)」から読むのをおすすめします。



○ 受け入れるのはいいことか?

 倫太郎は、何でも許容する。

 これは、一見、寛容で優しく、見習うべき態度に見える。

 また、カウンセリングや、精神疾患の治療の基本は、受容なのだろう。

 しかし、こんなふうに受け入れるのは、仮に可能だったとしても、いいことなのか?
 病気だからと言っても、盗んだり、お金を脅し取ったり、虚偽のでっちあげをして、人の人生を窮地に陥れても、それを受け入れるべきなのか...。

 カウンセリングや精神科的には、答えはYesなのだろう。

 しかし!!!!

 病気の人はなぜいつも勝手が許されるのか!

 周囲の人間は、なぜ、いつも一方的に我慢に我慢を重ねなくてはならないのか!

 周囲の人間は、病気の人間から、理不尽に罵倒されても、なぜ、一方的に耐えなければならないのか!

 周囲の人間たちは、機械でも、下働きでも、病気の人にサービスを提供するために、病気の人間から雇われているわけでもないのである。

 精神疾患にかかっている人物のみに思いをいたし、周りの人間にかかっているものすごいストレスを全く無視する精神科医やカウンセラーとはいったい何なのか。彼らにとって、周りの人々は人間ではないのだろうか?

 精神科医やカウンセラーは、精神疾患の患者の家族に、「患者さんを受容することが大事です。反論したり、批判したりすることは、患者さんの回復にとってよくありません。そういうことをすれば、症状を悪化させるでしょう。とにかく、受容してあげることです。」などと言う。ただでさえ、精神疾患の家族への対応に悩み疲れている家族は、ものすごいストレスを強いられる。

 1996年に、精神的に病的な状態の息子を持った父親が、息子により日常的に繰り返される妻や自分自身への暴力と横暴に耐えきれなくなって、ついに息子を金属バットで殺してしまった事件があった。湯島・金属バット殺人事件である。
 この息子は、親に命令して、服などを買いに行かせては、買ってきたものが気に食わないと言って親に暴力を振るい、母親の顔を殴り、頭を踏みつけ、料理を作らせてはまずいといって作ったものを投げつけるなど、暴力と横暴の限りを尽くし、親の顔も体も痣だらけだったそうである。この息子は、ビデオを親に録画させては、それが失敗したと言って殴り、プロレスのチケットがとれなかったといって殴り、親を土下座させて蹴り、時には道具を使って、出血するまで殴ることもしばしばあり、母親は暴力の恐怖に怯え、父親は、これからもずっと続くと思われるこの暴力に絶望して、自殺を考えるようになった。
 この父親は、精神神経科の診療所にも相談していたが、医師は、暴力に耐え、息子を受け入れるのがよいと言っていたそうである。それで、父親は息子の暴力にもずっと耐えていた。クリニックの医師は、「奴隷のように使われるのも、ひとつの技術ですよ。」などとも言ったそうである。しかし、家族への暴力に耐えきれなくなった父親は、ついに息子を殺すことになったのである。

 こんな無責任なアドバイスをしてきた精神科医は、この結果に対する責任を問われるべきだろう。この精神科医の言葉が、この父親・家族を追い込んだのである。

 ここまで極端な例でなくても、自分には、精神科医やカウンセラーは、患者ばかりを考え、周囲の家族など、ただでさえその対応にものすごくストレスを感じている人々の精神をないがしろにしているように思えるのだ。

 人間は、イヤなときには怒ったり、その意思表示をするべきであると思う。そして、それを我慢することは、ものすごいストレスである。
 ましてや、暴力を振るわれたり、物を盗まれたりしても、その人をそのまま受け入れるなど、周囲の人は、一体どこまで耐え続けなければならないのか。
 精神疾患の人に対しては、その人の行動を否定すると回復を遅らせるからそうしてはいけないと言われても、それで周囲の人が精神を病むほどに追いつめられていいはずがない。


○ 最後に

 このドラマは、テーマとしては、かなりおもしろいものを扱っている。
 倫太郎と関わったら病気がすぐに治ってしまうのは、非現実的でご都合主義だが、それはドラマとして成り立たせるためには仕方ないのかもしれない(こういうご都合主義は、「ドクターX」などにも見られる。)。

 しかし、非情で横暴な母親にどこまでも耐えて好かれようとするあきらの設定や、どんなにひどいことをされても受け入れる倫太郎を見ていて感じるイライラ感は、なんとかならないものか?
 そして、まるで、慈善事業かのように患者に対応している倫太郎の設定もどうにかならないものか?倫太郎を善人に描きたいのはわかるが、現実味があまりにもなさすぎて、しらけてしまう。

 次回作では、より洗練された脚本で、視聴者を引き込むドラマを期待している。


(完)

光太
公開 2015年9月6日

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