Dr. 倫太郎 (1)


「Dr. 倫太郎」   (日本テレビ) 2015年

評価: 65点


 このドラマは、おもしろいことはおもしろい。

 しかし、納得いかない設定、違和感を持つ展開も多かった。

○ 突然、いとも簡単に治ってしまう患者たち

 神経症・精神疾患と言われるものは、非常に治すのが難しい場合が多い。

 しかし、このドラマでは、ちょっとドラマチックな出来事があると、突然悪い魔法が解けたかのごとく、病気がたちどころに治ってしまうようなのである。
 「だって、すごく感動的なことがあったり、感動的な言葉をかけられたりしたら、治っちゃうこともあるんじゃない?」
 と思う人も中にはいるかもしれない。

 しかし!

 実際は、そんな甘いものではない。
 精神疾患のある患者の中には、何十年も病院に通い続けなければならいない人たちも少なくないのだ。
 通常でも、治療には数年かかるというのは、ごく一般的なことだろう。
 こうした病気は、ちょっと落ち込んでいるのが元にもどったとか、そんな簡単なものとはわけが違うのだ。
 極めつけは、最終話である。
 ずっと多重人格症に悩まされてきたあきらも、瞬時に、これまでの状況とは想像もつかないような、魅力的で優しい女性になってしまった。
 そして、あきらの母親も、怯えるあきらにお金をせびる極悪な母親だったのが、瞬時に、穏やかな人物になってしまった。

 あきらの場合は、倫太郎に抱きしめられたのが大きなきっかけであり、あきらの母親の場合は、あきらから、これまでの思いを伝えられたことがきっかけという設定だろうが、あまりにもご都合主義ではないか?

 こんなに簡単に深刻な病気が治るなら、苦労はしない。現実はそんなものではない。それに、こんなに簡単に深刻な病気が治るなら、もっと早くそうしていればいいだけで、これまでの展開はなんだったんだということにもなる。
 もし、こんなに簡単に治るなら、そんなこともわからず、そうした対処をしてこなかった倫太郎は、ヤブ医者ということになろう。


○ 無料で診療?

 倫太郎は、あきらに、いつでも相談に来てくださいと言っている。
 倫太郎は、患者全員にこういうことを言っているのだろうか?
 もし、そうなら、精神病院は、毎日、押し掛けてくる患者でいっぱいになってしまうだろう。

 それに、倫太郎は、病院以外でも、しょっちゅうあきらに会う。
 治療だ、みたいなことを言っているが、特定の患者だけにこのように接しているとすれば、そもそも、医者として患者を治療しているのとは明らかに異なる。
 どうして、あきらだけを時間外にも診療し、あきら以外の患者を時間外に救おうとしないのか。

 そして、全ての患者にこのようにしているという設定だとしたら、そんなことはそもそも不可能である....。

 それから、治療費は一体どうなっているのか?
 倫太郎が勝手に会いに行っているのだから、この場合は、金銭は要求していないのだろう。
 では、病院に、いつでも相談にくるように言っているが、その時はどうなのか?
 普通は、精神神経科にかかりたくてもそれなりにお金がかかるから、そんなにしょっちゅうは行かないのではないか?
 いつでも行きたくても、お金がかかるのであって、それでも来いというのはどういうことなんだろうか...。


○ 何でも受けいれろと言うのか?

 倫太郎は、夢乃にかなりひどいことをされても、「ずっとあなたのそばにいます」と言って、夢乃のしたことを非難したりせず、寄り添う。
 倫太郎が、いくら、夢乃のことを好きだったからと言っても、限度がある。300万円貸してほしいとか、家の中をめちゃくちゃにされ、窓を壊され、通帳なども盗まれそうになったりとか、うその記者会見で窮地に立たされても、受け入れている。

 そんなことがありうるのか?

 自分は、夢乃の行動と、それを全て受け入れてしまう倫太郎に、かなりイライラした。

 もう一つある。
 あきら、夢乃は、その母親の夢千代にさんざんひどいことをされ、お金を巻き上げられても、夢千代を見捨てたりせずに、夢千代から抱きしめられるために、無理矢理にでもお金を作って、夢千代に渡す。  いくら何でも、度が過ぎている。
 確かに、精神疾患の中には、一般の人には考えられないような思考パターンをするものもある。  実際に、DVの男から離れられない女性などもいる。周りがどんなに止めようとしても、引き離そうとしても、そうした女性は、DVの男から離れない。
 自分には理解不能である。

 しかし、あきらの場合は、全く、想像を絶する。
 子供の頃に、放置され、苦しく寂しい子供時代を送り、母親らしいことは一切してもらえず、1000万円ものお金を強要され、それでも夢千代を捨てたり嫌いになったりしない。
 こんなことがありうるのだろうか?

 通常なら、親子の間柄であっても、恐喝で警察に訴えるだろう。

 そこまで行かなくても、親を恨み、嫌いになるのが一般的だろう。
 一般的じゃないから病気だと言ってるんだ、というかもしれないが、物事には限度がある。

 じぶんは、そういうあきらに、かなりイライラした。


「Dr. 倫太郎 (2)」に続く!



光太
公開 2015年9月6日

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