CONTROL〜犯罪心理捜査〜


「CONTROL〜犯罪心理捜査〜」   (フジテレビ) 2011年

評価: 90点


 起きた事件を心理分析によって解決していくという、このドラマの基本的なコンセプトはかなりいい。
 この切り口は、特に、それほど斬新というわけでもなく、例えば、「Mr. Brain」なども同様のテーマを扱ったドラマと言える。だが、やはり、改めていろいろと学ぶところがあっておもしろかった。

 例えば、「道で誰かが倒れるのを見かけたとき、周りに他に誰も人がいなければ倒れた人を助けるが、周りに多くの人がいると、責任が分散されるため、助けようとしない傾向がある。」「ウソをつき通そうとするとき、相手から視線をそらさない傾向がある。」といったようなことは、非常にうなずける。南雲教授が、第3話において子供同士の従属関係を見破るところや、第1話で、息子が亡くなったのに、遺体確認に来た両親の表情に安堵の表情を読みとるところなどは、見ていて非常に感心した。
 第7話では、人間は実際に見ていなくても思いこみで記憶を作ってしまうことがあること、人々は警察の捜査になんとか協力しようとして、自分で作り出した証言をしてしまうことがあること、また、愛情が強いと、それが失われたとき、強い憎しみに変わることなどが扱われていたが、どれも人間の心理の特徴を的確にとらえていて勉強になる。

 一方で、このドラマには、心理学の知識を利用してウソを見破るシーンがたくさん出てくるが、もちろん、実際には、このドラマのように、ウソを簡単に見抜けるわけではない。例えば、「ポケットに手を入れる」「首のうしろを触る」「右上を見る」といった行為が、ウソを示すものとしてドラマには出てくる。しかし、こういった行為とウソの間に、実際にどれくらいの相関があるだろうか。実際には、そうした行動から、ウソを見抜ける実例はそんなにないのではないかと思う。
 もし、こうした行動から、そんなに高い精度でウソかどうか見破れるなら、例えば、小沢一郎に関する検察の取り調べなどで、小沢氏やその秘書たちが本当のことを言っているのかどうか、心理学者に立ち会ってもらってコメントを求めるべきだろうが、実際にはそんなことはしていない。小沢一郎の事件は、取り調べにおける本人や秘書たちの証言・説明が重要なポイントとなっており、これらの証言が本当かウソかは決定的に重要である。でも、それを判断するのに、実際にはプロの心理学者たちを使ってはいない。
 もちろん、この事件に限らず、多くの事件において、容疑者たちの言っていることが本当かどうかはかなり重要である。また、冤罪かどうかが争われているような裁判では、被告が本当のことを言っているかどうかは致命的に重要である。もし、ウソが、このドラマや「MR. BRAIN」くらい簡単に見破れるなら、裁判所は裁判において心理学者を必ず出廷させ、被告の一挙手一投足を分析させるべきだが、それはやっていない。これは、こうしたドラマでウソのサインとして紹介されているこのようなしぐさなどからは、実際にはあまり有益な情報は得られないということを意味しているのだろう。

 さて、このドラマは、心理学について学べるばかりではなく、さりげなく、社会にとって重要な問題も提起していた。第8、9話においては、受刑者が出所した後に社会復帰することの難しさが描かれていた。また、出所した後の受刑者を見守る保護司の役割やそのたいへんさも表現されていた。こうした実状を一般の人たちもよく理解しておくのは非常に重要である。

 さらに、ここが一番重要なのであるが、このドラマで最も評価したいところは、ストーリーをかなりきちんと作ってあるところである。

 刑事もの・事件もののドラマは、その性質から言って、ストーリーに矛盾や不自然なところがあるべきではない。だが、例えば、「遺留捜査」や「告発〜国選弁護人〜」などでは、ストーリーの矛盾などがあまりにも多く、展開も不自然すぎて、見ていて疑問ばかりを感じた。

 このドラマも、もちろん、ドラマであるからには、細かいところでは現実的でない点もなくはない。
 例えば、第2話では、研究生に、年に13冊も本を出版させていた教授が出てきたが、そんな数の本を出版することは、いくら優秀な研究生でも到底不可能だろう。また、第3話では、学校の警備員が、実際には目が見えなかったのに、それを隠していたため、その事件が起こるまで、誰もそれに気づかなかったということであったが、これなども、現実的にあり得ないだろう。そして、同じく第3話で、プールで溺れた子供は、ストーリーのほぼ終盤まで、プールに突き落とされたために溺れたことになっていて、終盤で、主人公がこの子供は泳ぎが得意だったことに気づくのだが、そんなことは、周囲の人たちは知っているはずだし、捜査の初期段階で気づくはずのことであろう。第4話で、家宅捜索令状なしに、容疑者の自宅に勝手に侵入して捜査をしたのも、いくらなんでもやりすぎだ。いかにも、真実を知りたいという熱意からの、正義の行動のように描かれているが、こんなことが許されるなら、日本は、警察が何でもやり放題の、恐怖の警察国家になってしまう。

 ...といった点もあるのだが、上に挙げた「遺留捜査」や「告発〜国選弁護人〜」といったドラマなどに比べれば、このドラマは、はるかによくできており、かなり安心して見ることができた。

 このドラマはシリアスなドラマでもなく、コミカルなシーンも多いのだが、ストーリーをきちんと作っているところは大いに評価したい。そのため、おかしな点に気を散らされることなく、見ていて引き込まれた。
 特に、ラストの2話などは本当にシナリオがよく考えて作られていたと思う。いいかげんにドラマを作ると、これだけ複雑な展開にすると、展開にいろいろなほころびが見えてくることも多いのだが、このドラマはかなりよく考えられて作られている。

 他のドラマも、このドラマを見習って、ストーリーや整合性にきちんと配慮して、しっかり作ってもらいたいと思う。

 このレベルを維持できるなら、そして、心理学的なおもしろい知識がまだまだあるのなら、ぜひとも続編を期待したい。

(完)

光太
公開 2012年3月4日

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