少子化 (2)



これは(2)です。少子化 (1)から読むのをおすすめします。



○ 結婚しない場合の恐ろしい未来を教えるべき

 だが、個人的には、ライフスタイルが変わったというのは、個人の選択だから、国家が介入できない、というところには、少し違う意見を持っている。
 これは、別の項できちんと論じたいと思っていることだが、現代社会において、結婚しないことのリスクを、社会が、子供たち、特に女の人たちにきちんと教えてこなかったことが、非常に大きな問題であると思う。

 結婚しない女性に理由を聞くと、「自由が失われる」「適当な相手とめぐりあわない」「必要性を感じない」などという回答が多いそうだが、そんなのんきなことを言っている場合ではないと思う。
 端的に書けば、男の人は結婚しなくても、まあ、孤独に一生を終えるくらいで、それほど実害はないかもしれない。だが、女の人たちが結婚しなかったら、たいへんなことになる。一般に女の人が、一生、職を持って、経済的に十分な収入を得るのは、それほど簡単なことではない。特別な能力を持っているとか、看護師や薬剤師の資格などがある人などはいいが、そうでないと、かなり難しい。そうした女の人たちは、中高年になったとき、たいへんな貧困状態に陥るだろう。母子家庭の平均年収、貧困率(相対的貧困率)をご存じだろうか?平均年収は212万円、そして貧困率は、実に54.3%(2007年の調査結果)である。そして、経済的な問題ばかりではなく、心理的な環境もかなり深刻な事態になる。周りの同年代の女性たちが子供を持ち、子供に関係する会話がほとんどになっていく中で、その輪に入れず、たいへんな孤独感を持つことになるだろう。若いうちは気にならないかもしれないが、40代、50代になったとき、小中高と育っていく子供を持つ友人たちを見ながら、相当寂しい思いをするだろう。60代以降は、孤独死の恐怖を感じながら日々を送ることになる可能性も高い。それに耐えながら生きていくのは、非常につらいものだと思う。未婚高齢女性たちの、自殺率の大幅な上昇も予想される。

 もちろん、結婚するといろいろとたいへんなことは多い。我慢しなければならないことも多いし、理不尽なことも多いだろう。だが、結婚しない場合には、恐ろしい貧困と強烈な寂しさと後悔が待っているだろう。それに比べたら、結婚のつらさは、多くの人にとってはかなり負担が小さいのではないだろうか?

 そして、これも別の機会に詳しく述べるが、男の人が女の人と結婚を考える場合の一番重要なファクターは、年齢である。したがって、まだ、結婚はいいや、いつかすればいいから、などと思っていたら、結婚市場における価値はどんどん低下し、どんなに必死になっても結婚できなくなるだろう。これは、差別的に聞こえるかもしれないが、いろいろなデータがそれを示している。うそだと思うなら、35歳以上の女の人に、男の人から誘われる機会がどのくらい減ったか聞いてみるとよい。言葉はよくないが、結婚をしたいと少しでも思うなら、手遅れになる前に結婚しないと、永遠にその機会は訪れないだろう。これは怖がらせようと極端なことを言っているのではない。詳しくは、別の記事で書くので、しっかり読んでほしいと思う。

 こうした客観的な事実やそれを示すデータは、人々の将来設計について非常に重要なはずである。自分は、国や社会や教育が、こういうことをきちんと教えないできたことが非常に重大な過ちだと思う。もちろん、社会が、結婚すべきかどうかを人々に押しつけては絶対にいけない。だが、結婚する場合、結婚しない場合の、客観的なメリット、デメリット、どうなったら結婚できなくなってしまうのかなどを、きちんと子供たちに教えるべきだと思う。
 そうすれば、個人個人がそうした情報を元に、後悔のない人生を送ることができる。こうした現実を知らずに、結婚は納得できる相手が現れたら...、などとのんきなことを言っているうちに婚期を逃し、暗澹たる気分になる女の人たちも減るはずである。こうしたことをきちんと教えることは、不幸になる人の数を大きく減らすことなのだから、きわめて大切なことである。

 まあ、これについては、別の機会に論じるので、待っていてほしい。


○ 少子化を止めるのは不可能!

 話を少子化に戻そう。

 今の少子化対策はほとんど無意味であることは、自分としては知っていたので、それほど驚くこともなかった。自分が恐ろしくなったのは、松谷教授のその次の説明なのである...。

 松谷教授は、少子化対策としては、若い男性たちの収入を増やすことが最も有効であると述べた。だが、それをやっても、焼け石に水で、ほとんど効果はない、と言っていた。

 なぜか?

 まず、女の人が子供を産むことができるメインの年代は、20歳から35歳くらいまでである。したがって、この年代の女の人の人数は言うまでもなく非常に重要である。ところが、今の人口構成を見ると、38歳くらいの世代から若くなるにつれて、人口はどんどん減少し、今の0歳の世代は、38歳の世代の人口の半分くらいしかいないのだ。当然、女の赤ちゃんの数も半分である。つまり、30年後あたりに子供を産むことができる女性人口は、これからどんどん減っていってしまい、近年の20歳から35歳の人口の半分くらいの数になってしまうのである。
 今、少子化が叫ばれているが、近年の、比較的多い20歳から35歳の女性人口をもってしても、生まれる子供の数は非常に少なくなっているのである。これからもその年代の女性人口はどんどん減っていき、半分にまで減るわけである。これは既に確定している。この年代の女性人口が減れば、当然赤ちゃんはどんどん生まれにくくなっていくわけである。
 つまり、国立社会保障・人口問題研究所などの人口予測は、少子化対策で簡単に変えられるようなものではなく、少なくとも30年後まではほどんど動かせない、そして、そこまでが動かせないということは、その先もしばらく動かせないということである。人口統計予測は単なる予測ではなく、確定事項だと思ってよいのである。要するに、かなり恐ろしい少子高齢化社会は、避けようがないということなのである。

 自分は、松谷教授の話を聞いて、恐ろしくなった。
 確かにそうだ...。

 松谷教授は、「政府は、これを見ないようにしている、または、なかったことにしようとしている」と言っていた。

 確かに、政府もマスコミも、この恐ろしい事態が確実に来るのではなく、何か政策をとれば回避できる問題であるかのように言っている。この問題の恐ろしさをあまり正面から国民に説明していない。
 そんなことでいいのだろうか?

 自分には、マスコミも政治家も、あまりにものんきに見える。これだけ深刻な事態が迫っていながら、「消費税を上げる前に、まず、国会議員の数を減らし、歳費を減らさないと納得できませんよねえ。」などと言っている。そんなことを言っている場合ではないだろう。

 マスコミや政治家が国民にこの事態をきちんと説明せず、受けねらいの甘いことばかり言っていては、国民は、これがどんなに深刻な問題か知る機会を与えられない。その結果、財政問題がいかに深刻なのかも実感できず、例えば、早急に増税しないといけないことも、納得できないのではないかと思う。

 政治家は、早急に、国民にこの事態を説明し、この危機を回避するためにできることは全てやると宣言すべきだろう。

少子化 (3)に続く!



光太
公開 2011年7月30日

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