「ALWAYS 続・三丁目の夕日」 山崎貴 (監督) 2007年
評価: 78点
○ 続・三丁目の夕日
続編の続・三丁目の夕日もなかなかよかった。
個人的には恋愛にはあまり関心もないので、茶川とヒロミの関係についての部分は、いい話のかもしれないが、特に何も思わなかった。
自分が感動した部分は、いくつかある。
まず、感動したのは、芥川賞の受賞者決定の日、淳之介の父親が茶川の才能をけなしたのに対して、鈴木オートが、「小説を読んでから言っているのか?」と言って、自分自身が茶川の小説を読んでいたことを告白した場面である。
鈴木オートは、純文学など読むわけがない、というふるまいをしていたし、近所の友人たちも、純文学なんか読まない、というふうにふるまっていたのに、実はみんな読んでいた、というのが明らかになるこのシーンを見て、本当にうれしい気持ちになった。
こういった手法は映画の脚本としての常套手段、かつ、展開として現実的にはやや不自然でもあるのだが、こういう展開はやはり感動する。
また、茶川が、芥川賞をとれなかったために、淳之介を父親に引き渡すしかないと思いつめて、淳之介に、それを伝えるシーンがある。ここで、淳之介がそれを本当にいやがるシーンも、淳之介の、茶川と一緒にいたいという思いが表現されていて非常に感動的である。淳之介の茶川に対する感情がひしひしと伝わってくる。一作目を思い起こさせるシーンである。
もう一つ、鈴木オートの子どもの一平と、はとこの美加が仲良くなっていくところやその別れもよかった。美加は、最初はかなり嫌な女の子だったのに、急激にいい感じの女の子に変わったのはちょっと不自然ではあったが、まあいいだろう。
子どものころの、友達との別れは本当につらい。子どもの頃の気持ちを忘れてしまった人は、そうしたことをすぐに理解できないかもしれないが、友達と別れるときの、子どもの頃の気持ちと、大人の気持ちは全然違う。
子どもの頃の気持ちを忘れてしまった人たちのために、説明しよう(子供の別れといったテーマのレポートを課せられた大学生などにも、以下は大いに参考になるだろう。)。
まず、大人は、特定の友達との人間関係も子どもに比べれば薄いが、子どもは比較的狭い世界に生きているので、特定の友達との人間関係は圧倒的に重要である。また、大人は友達と会う頻度もあまり頻繁ではないが、子どもの場合、ほぼ毎日に近い頻度で友達と会っている。それだけ親密なのである。さらに、仮に東京と福岡に離ればなれになってしまうということであっても、大人なら会おうと思えば会えないこともないが、子どもにとってはそれはほとんど無理なことに思えるし、その距離も、子どもにとっては、他の惑星に行くくらい遠いところに思えるだろう。また、仮に二年に一度くらい会える可能性があるとしても、大人ならそれで十分満足できるかもしれないが、子どもの時間の流れからして、二年間会えないというのは、感覚的には永遠に会えないのとほぼ等しい。そして、慣れの問題もある。大人はそういう別れに何度も接してきてある程度慣れているが、子どもはそういうことを経験した回数も少ないから、別れの刺激が大きい。
したがって、子どもの頃の別れというのは、大人の別れより、圧倒的につらく悲しいものである。
このエピソードは、子どもの頃の、こうした友達との別れというものをとてもよく表現していて、非常によかった。せっかくなので、一平と美加が一緒に犬を助けに行ったときなどの回想シーンを、別れ際に入れるとさらによかったと思う。
これを読んで、二人の間の感情は、友情ではなく、幼い恋心じゃないのか?と思う人もいるかもしれない。もちろん、恋心の面はないとは言えないが、この二人の話は、少年同士でも確実にほぼ同じことになると思う。だから、男女という点はここではあまり重要ではなくて、友達と別れるという点が本質なのだと思う。
だた、この映画で、ちょっと疑問に思ったところがある。芥川賞の選考委員のふりをした詐欺師に、茶川の作品を芥川賞に選ぶにはお金が必要と言われたときに、賞をお金で買うというこの提案に対して、誰もほとんど反対しなかったところである。
詐欺に引っかかったというエピソードを入れたかったのだと思うが、ちょっといかがなものだろうかという気がする。
賞をお金で買うというのは、明らかに不正行為である。いくら、近所の人たちも茶川の受賞を強く願っていたとはいえ、わいろのようなものを渡すことに、みんなが進んで賛成するというのはどうかと思う。
曲がったことが嫌いそうな鈴木オート、それをもっと許さないと思われるろくちゃん、茶川ファンで頭も良く、いつも理性的にふるまっている淳之介。こういった人たちが、お金で賞を買うような行為に、一切異を唱えないどころか、あろうことか率先して協力している。ろくちゃんは、東北の同じ町から出てきた武雄が、人からお金を巻き上げていたことに怒っていたが、それは許せないのに、お金で芥川賞を買うような行為にはなんら異を唱えない。
これは不自然すぎるだろう。
まあ、いずれにしても、続・三丁目の夕日の方も、一作目ほどではなかったが、いいところの多い映画であった。
光太
公開 2012年2月5日