ALWAYS 三丁目の夕日 (1)


「ALWAYS 三丁目の夕日」     山崎貴 (監督) 2005年

評価: 95点


 ここでは、まず、一作目の三丁目の夕日について論じる。この映画への評価は、非常に高い。そして、次に、続・三丁目の夕日について述べる。これも基本的には評価は高いが、違和感があるところもあったので、それについても書く。

 一方、これらの映画を見て、昭和30年代はいい映画だと思っている人たちに対して言いたいこともあるので、最後にそれについて書こうと思う。それは全くの幻想だからである。


○ 三丁目の夕日 一作目

 この映画では、昭和30年代の風景を非常によく再現することに成功している。当時の風景をここまで再現できたのは、もちろんこの映画のひとつの注目点であり、それはこの映画の大きな評価のポイントなのだろう。
 だが、個人的にはそうした映画技術的なところにはあまり興味を持っていないので、その点は別の論者に譲りたい。

 個人的には、なんといっても、やはり、茶川と淳之介の交流や、茶川の淳之介を思う気持ち、淳之介の茶川を慕う気持ちに最も感動した。

 この映画の、昭和30年代の再現や、その時代の人たちの人情、茶川とヒロミの恋愛関係などは、それに比べたら、自分にとってはどうでもいいことに思えた。

 この映画は、子どもの視点を非常に的確に捉えている。
 そして、自分は、この映画を、基本的に淳之介の視点で感情移入しながら見た。

 映画では、まず、淳之介のそれまでの人生や経験が描かれているので、淳之介にとって、茶川との生活がいかに楽しく、大切なものなのかが見る者にひしひしと伝わってくる。自分のみならず、この映画を見る者は淳之介を心から応援したくなるだろう。

 子どもにとって、好きな冒険小説を書いている作家と一緒に暮らせるなどというのは、この上ない幸せでもあるだろう。茶川と暮らせることになった淳之介のうれしさは想像もつかない。

 そして、子どもは正直だから、言葉にしろ表情にしろ、ダイレクトに気持ちを表現するが、この映画では、淳之介の茶川に対する気持ちが非常によく演じられていて、そこが本当に微笑ましい。
 淳之介役の須賀健太は、けなげで素朴な淳之介を非常によく演じており、この演技はかなりの評価に値する。

 そして、茶川の淳之介への思いや、淳之介の茶川への思いがストレートに表現されるラストは、本当に涙が止まらなかった。


 さて、この映画を見て、昭和30年代には、人々が今よりも温かい精神を持っていたと感じたがる人たちもいるようだ。しかし、この茶川と淳之介の関係については、これが、昭和30年代であるかどうか、といったことは全く関係ないだろう。

 確かに、この時代には、いい意味でのいいかげんな風土があったからこそ、茶川が淳之介を受け入れる余地があったとは言えるだろう。だが、この時代だから、人々が純真な心を持って他人を思いやっていたが、現代はそれが失われてしまったということは全くないだろう。それは過去に対する幻想であり、現代に対する根拠なき不当な評価だと思う。
 この映画が描いているのは、いつの時代にも、そしてどこの国でも共通する、子どもへ思いやりや子どもの大人に対する信頼感、ヒューマニズムであると思う。だから、これを描くのには、昭和30年代ではなく、現代であっても全く差し支えなかったであろう。

 この作品は、いわゆる感動ものに位置づけられるだろう。そして、観客を感動させることを明らかに目的にした映画だとは思う。そういうあからさまな映画を、あまり好まない人たちもいる。
 だが、自分は、特に茶川と淳之介の関係に、純粋に深い感動を覚え、それを正面から描くことのできたこの映画を非常にいい映画だと感じた。


ALWAYS 続・三丁目の夕日 (2)に続く!

光太
公開 2012年2月5日

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