光太の映画批評・ドラマ評・書評・社会評論
銭の戦争 （２）
○ 顧客データを空き地に捨てる？
未央は、梢から要求されて持ち出した顧客データを、結局、梢に渡すことはできずに、投げ捨てる。
自分は、このとき、この人は一体何をしているんだ、と思った。
データを持ち出してしまったが、梢に渡すことは思いとどまった、というのはいいとして、そんな大事なデータは、普通は、ちゃんと消去するだろう。そうでなくても、USBメモリを徹底的に破壊するとかするだろう。仮に、もっと不用意で愚かな人物だったとしても、未央と梢は、大きな川のほとりにいたのだから、最低限、川に投げ捨てるだろう。
しかし、あろうことか、未央は、わざわざ人に拾われる可能性が非常に高い空き地に投げ捨てるのである。
ばかばかしいにもほどがある。
そして、案の定、赤松に拾われ、脅しに使われる。
ばかばかしくて話にもならない。
仮に、赤松に拾われなかったとしても、そして、仮に、善意の人に拾われたとしても、その中身が大事な顧客情報だとわかれば、脅迫に使われなくとも、大きな責任問題になるはずである。
未央は、そんなこともわからないのだろうか。
頭が悪く、常識知らずにもほどがある。
これでは、いっそのこと、「みなさん、ストーリー展開のために、これを拾ってもらう必要があるので、これから、わざわざ、誰でも拾えるところに投げ捨てるんですよー。」とでも、ドラマ中で解説してもらいたい。そうすれば、そんなおかしなことをした理由が明確になって、はるかにすっきりする。
そして、そもそも、まともなセキュリティ対策をされている企業であれば、USBメモリに顧客情報をコピーすることが不可能な対策がなされているはずである。
○ 殺されかけたのに...
第５話では、白石は、赤松社長が自分の父親を死に追いやったことを知り、赤松社長を殺しかける。
しかし、続く第６話では、白石は、赤松金融に何食わぬ顔をして出社する。他の二人の従業員は、社長を殺しかけておいたのに出勤するなんて、信じられない様子であるが、その後出勤した赤松社長は、何事もなかったかのように、白石と挨拶する。二人の従業員は、それを見て理解できない様子であった。
こんなことは、どう考えてもあり得ない。
白石の方は、復讐の目的があるのだから、赤松金融の事務所にいられることにはメリットがある。しかし、赤松社長には、自分に強い恨みを持ち、殺しかけてきた人物を身近においておくなど、あまりにもリスクが大きいはずである。普通なら、主人公側も当然それを理解しているから、出勤などしないはずである。
が、白石は出勤し、赤松社長は追い出しもしない。
ここには、「白石たちは、普通の人がわからないような高度の思考をしているのだ。一般人にはわからないだろうがね。」というような、嫌みな感じがある。
ばかばかしい。
こんな行動をする人がいれば、単なるバカである。
普通なら、殺されかけたのだから、警察に警備をお願いするなり、主人公を常に監視する人を雇ったりして、主人公と接触しないようにするだろう。
自分を殺そうとしている人をわざわざ身近において、もし殺されたら、全く自業自得としか言いようがない。
○ 終盤の展開もおかしい
第10話では、白石はインサイダー取引をしそうになる。この時、元上司は、赤松のたくらみにより、白石を陥れようと、白石にインサイダー取引を勧める。しかし、白石がそれを断った途端、元上司は「悪かった。」というようなことを言って、白石に謝る。あまりにも、突然の豹変である。この人の人格はいったいどうなっているのか？ここまで急激に態度が変わると、もはや、この人は精神病ではないかという疑いも出てくる。
最終話では、白石は、赤松のお金を返した上で、脱税の容疑で東京国税局に赤松金融を家宅捜索させることになる。白石は、これを、赤松の怒りを鎮める方法だというようなことを言っていた。そして、ドラマでは、最後、赤松は、穏やかな表情になって、白石を抱きしめる。全く、意味不明な展開である。脱税を告発され、脱税容疑で逮捕されて、莫大な追徴金を払ったら、赤松の大好きなお金が減ってしまうし、実刑で刑務所に入らなくてはならない。あれだけ白石を恨んでいて、お金を返しただけでは怒りは収まらないとか言っていたのに、さらに赤松の不利益になるようなことをしたら、いきなり、赤松が友好的になると言うのは、全く支離滅裂である。
さらに、最後に、青池ファイナンスで、白石が、青池ファイナンスを批判するようなことを叫んで、実はこれが、梢に、会長とは決別していることを示すために記者たちに説明をするための助け船だったというようなのも、かなり無理がある。
ついでに言えば、梢が今後の青池ファイナンスを率いていくという展開だが、梢には、ほとんど経験もないのだから、青池ファイナンスのような巨大企業を率いていくのは不可能である。あれだけの企業を率いていくとなれば、長年の様々な経験に裏打ちされていないと難しい。韓国では、財閥のお嬢様などを描くのはよくある題材かもしれないが、ドラマチックにしようという意図があまりにも見え見えである。小学生向けのアニメでもあるまいし、全く幼稚すぎる設定である。８歳くらいの子どもが世界を恐怖に陥れている凶悪なモンスターを倒し、世界を救うようなものである。
○ 最後に
ストーリーを展開させるために、こんな不自然な行動ばかりさせなければならないというのは、ドラマとして全く稚拙である。
見ている間に、違和感ばかりを感じさせられるのでは、ストーリーに集中できない。
人物の行動や性格がおかしく感じるのは、韓国の原作を元にしているからなのだろうか？韓国で作られたドラマもこんなに幼稚な作りになっているのだろうか？
自分は、韓国ドラマを見たことがないが、韓国ドラマは、みんなこんなに不自然なのだろうか？
もしそうだとしたら、韓国は、ドラマ制作において、相当遅れた国である。また、日本版だけがこのようにおかしいとしたら、韓国に失礼である。
いずれにしても、ドラマを作るなら、もうちょっと、まともな人物設定をしてほしい。
題材は悪くないので、作りようによっては、もっとまともでおもしろいドラマになったかもしれないのに、残念きわまりない。
徹底した反省を求めたい。
(完)
光太
公開 2015年5月7日
