光太の映画批評・ドラマ評・書評・社会評論
銭の戦争 （１）
「銭の戦争」 (関西テレビ) 2015年
評価： 28点
韓国で非常にヒットしたドラマということで、かなり期待して見始めた。
しかし、残念ながら、見ている間、ずっと違和感を感じ続けた。
人物たちの振るまいがあまりにも不自然だったり、ストーリーを展開させるための、わざとらしい行動が多すぎるのである。
以下に、不自然な点を挙げていこう。
○ 主人公の行動がおかしい
この主人公白石富生の行動や性格は、完全におかしい。
恩師である紺野の家にお世話になった後、平然と、その恩師の家に借金の取り立てに行く。
仮に仕事だとしても、「申し訳ないけれども、こういうことになってしまって...。一緒にどうやったら返せるか考えましょうか。」などと言うのではなく、冷酷な顔をして、有無を言わせず取り立てにくる。
実際には、借金の利息が少なくなるようなアドバイスなども陰でしていたわけなのだが、白石の表情も、全くそういう感じではない。冷酷非情な取り立て屋のような振る舞いをする。
でも、実は、情に厚い人間なのだ...、などというのは、ドラマの作り方として、あまりにもあざといやり方だと思う。
白石の、青池梢に対する態度もおかしい。
白石が困ったとき、どうにかしようと心配してくれた梢に対して、ものすごく嫌な男であるかのように振る舞う。
この行動にも、全く必然性が感じられない。
梢に、心配をかけないようにしよう、とか、お金の面で頼るのは気が引けるとか、梢と別れるという契約書にサインしてしまったからとか、そういうことならわかるのだが、白石の振る舞いや表情は、そうではない。
何の意味も感じられず、ただ、冷たくし、ひどい言葉を投げつけているのである。
全く、わけがわからない。
こんな、支離滅裂な行動でしか、展開の意外性のあるドラマを作れないとすれば、あまりにもドラマ制作の能力がなさすぎる。
見る人は、ドラマに引き込まれるどころか、支離滅裂な行動についていけず、辟易とするばかりである。
○ 結婚式で花嫁と逃走
結婚式で、花嫁の紺野未央と逃走するシーンも、あまりにもありがちで、見ていて恥ずかしくなった。
しかも、ここでも、白石の行動は全くおかしいのである。
借金を返すために、青年社長と結婚するのはいい方法だと未央に勧めておきながら、結婚式で、いきなり、異議を申し立て、式場から花嫁と逃走する。
それより前に、止める機会はいつでもあったのに、止めないばかりか、結婚を勧めておいて、しかも、結婚式までは全くそんな素振りも見せずにいて、いきなり、結婚式で、花嫁と逃げる。
こんなばかばかしく唖然とする展開があるだろうか。
そのせいで、花嫁は、式場の費用など、700万円を請求される。
白石の完全におかしな行動のせいである。
全く、バカげている。
繰り返すが、こんな展開を喜ぶ視聴者などいない。見る人を飽きさせないとか、見る人に予想できないようなストーリーにしようというのはもちろんいい。しかし、そのために主人公たちに全く支離滅裂な行動をとらせるのでは、ドラマとして完全に破綻してしまう。この展開には、不快感を持った人が大半だろう。
○ 梢も、ホワイト化学の従業員たちもおかしい
梢も、最初は、白石をなんとかしてあげようとする、非常に性格のいい女性として描かれているが、途中で、かなり嫌な人物になる。顧客データを持ち出すよう、未央に迫ったり、ホワイト化学を買収して、従業員たちをやめさせようとしたり...。青池ファイナンスの会長である祖母が、ホワイト化学を意図的に倒産に追いやったことを知り、それに抗議しながらも、ホワイト化学の乗っ取りをやめようともしない。
梢がこんなに嫌な人物で、白石も人に対して意味不明に冷たく接するようであれば、二人とも、もともと、ものすごく嫌な性格を内に秘めた人物たちであり、そんな二人の結婚がどうなろうと、仲が悪くなろうと、もはやどうでもよい。
ホワイト化学の従業員たちもおかしい。社長が亡くなって、いくら、不安を抱えることになったとしても、社長の葬儀で、社長の悪口を大っぴらに言い合うだろうか？そんな常識のない人々は、人間としてありえない。そんな醜悪な性格を持つ従業員たちなら、今後路頭に迷ったとしても自業自得だ、という気になる。しかも、後には、彼らはまた善人に描かれる。なんというご都合主義なのか。
展開をドラマチックに見せようとしているのだと思うが、とてもじゃないが、やり方が破綻している。
こんな、おかしな人物たちばかりが登場するドラマを、集中して見られるだろうか？
光太
公開 2015年5月7日
