ナポレオンの村


「ナポレオンの村」   (TBS)    唐沢寿明 (主演)     2015年

評価: 26点


 このドラマは、展開を感動的にしようとして、設定に無理がある場合が非常に多い。
 至るところで、微妙な気分になる。


○ 村

 最初に疑問に思ったのは、この村は、星河市の中にあるということである。村というのは、現在の市町村制では、普通は、市とは別組織で、市の中にはない。そこで、不審に思って調べてみたのだが、市の中に村という地名があることもあるそうで、これはおかしくはないのかもしれない。
 しかし、登場人物たちが廃村計画などと言っているところからみて、市の中の単なる地域の名前ではないようなのだが???

 それに、この村には、30人くらいしか人が住んでいないのだろうか? (^^


  ○ 第1話 スカイランタン

 時間になってイベントが始まらないからといって、すぐに文句を言って帰ってしまう観客って、いったい...。

 そして、住民がせっかく作った和紙を濡らして妨害するなんて、市役所職員として、いくらなんでも異常すぎる...。しかも、こんな重大なことをするのに何の葛藤もないようだ...。この人たちっていったい...。


○ 第2話 ヒロミの人格

 少女ヒロミの人格がそもそもおかしい。
 あまり親しくない人に向かって、いきなりこんな失礼な態度をとる人がいるのだろうか?
 大人に向かって頭が悪いと言い放ち、それほど親しくない人がわざわざ買ってきてくれた飲み物を払いのけて投げ捨てたり...。
 これは、思春期だからとかそういう問題ではなく、頭がおかしいレベルである。

 最後の方で、ホタルを母親に見せるために、みんなで昼間にホタルを捕まえる場面があるが、これもおかしい。ホタルを昼間に捕まえられるんだろうか?夜でないとどこにいるかわからないのでは?夜に捕まえるとホタルだということがその時点でわかってしまい、演出上不都合なのはわかるが...。


○ 第3話 滝壺レストラン

 これはそれほど大した発想なのだろうか?
 滝のある観光地に行けば、どこでもご飯を食べる食堂くらいはある。
 しかも、屋外となると、トイレがどうなるのかもわからないし、虫がたくさんいると思う。夜などはものすごくたくさんの虫たちが光に集まってくるだろう。(実際に、その次の回では、都会から来た女の人が虫に刺されていた。)
 夏の夜はともかく、秋口になればもう寒いだろう。冬は外でご飯をお食べるなど、もちろん不可能だ。夏のごく短い時間だけで、この店は採算がとれるのだろうか?

 それに、そもそも、このレストランを開いたオーナーは、小さな飲食店を、30人くらいしかいない村でどうやって経営していたんだろう...。


○ 第4話 カップリングパーティの回

 この回では、岬由香里の友人である小塚楓が、アクセサリーを取りに川に入る。
 これはかなり無理がある。
 まず、アクセサリーが都合よく引っかかっているのもご都合主義だが、それはまあいいとしよう。
 だが、相当危険な川にアクセサリーのために、一人で入っていくのである。そんなことをする人がいるのだろうか?
 そして、楓をみんなで助けるシーンも変である。
 あれだけ必死にみんなで手と手をつないでいるのに、その手が離れても、結局流されなかった。  なんだ、この展開は???

 そして、小塚楓は、村人たちに対して相当な文句を言っていた。友達が運営しているイベントなのに、こんな文句を言うとは、性格にものすごい欠陥がある。命を救われて感謝されたとしても、こんな性格の悪さを秘めている女の人を信頼してつき合いたいと思うだろうか?
 ちょっとどうかと思う。

 そもそも、こういう村のカップリングパーティに来る女の人たちが、こんなに文句を言うだろうか?村の人たちに対して、こんなに失礼な態度をとるだろうか?
 そして、助けられたら、手のひらを返したように、一瞬にして仲良くなってしまうのだろうか?


○ 第5話 テーマパークの回

 村のテーマパーク化ということだが、それ自体、相当無理がある。
 スタンプラリーみたいなのをやっていたが、こんなのは非常に安易なアイデアでは?アスレチックだって、いろんな場所にあるが、ほとんど使われていないような場所も多いのではないか?
 これで多くの人が過疎の村にやってくるのだろうか?

   廃坑は、かなり危険そうだったが、安全対策など、相当なお金もかかりそうだが、可能なのだろうか?

 しかし、最もおかしかったのは、無料公開日のイベントである。今後を左右する重要なイベントだと言っておきながら、どうして、来場が4組の親子だけなのか?1000組くらいは招かないとどうにもならないのでは?
 どうしてこれで宣伝になるのか?
 それに、これに対し、村人が一体何人関わっているんだ!
 こんなのでは、どうやって採算がとれるかもさっぱりわからない。
 とてもじゃないが、遊んでいるとしか思えない。

 市長の秘書の甲田が、廃坑内の電気を消していくシーンもあるが、こんな露骨な妨害ができるのも不可解だ。こんな幼稚な妨害はすぐに見抜かれるのでは?そして、見抜かれたときにはたいへんな事態になるのでは?


○ 第6話

 ここまでくると、話はもう支離滅裂だ。

 風評被害で村に人が来なくなったとき、村人たちは、いきなり浅井を非難し始める。
 浅井が悪いわけでも何でもないのだから、普通は、一緒に悩んだり、手だてを講じたりするはずだが、そんなことはせずに、村人そろって浅井に文句を言う。
 浅井のことをあまり知らないならそれでもいいかもしれないが、これまで、一緒にいろいろなことを企画し、乗り越え、達成してきた浅井に対して、突然、手のひらを返したようにこんな不満をぶつけ、解決しろというなんて、この村人たちは、頭がおかしい。

 そして、市の職員たちも、行動が支離滅裂である。浅井の行動に全然協力的でなかったり、いきなり協力的になったりする。前回協力的になったのに、次の回では再び協力的でなくなったり、全くおかしい。
 特におかしいのは、岬由香里である。協力的になって充実感を味わい、感極まって泣いたかと思えば、次の時には、また、前回の経験がなかったかのように浅井の行動を非難したりする。

 市長は無実だと、課長の山田が信じるのもおかしい。
 市長は、神楽村を中傷する記事が載ると知ったとき、非常に喜んでいたではないか。こんな市長ならやりかねないと考えるのが妥当である。

 それに、市長は無実だと証明するために、駅前で山田課長が作物を売るのもおかしい。どうして、これが、市長は無実だと証明することになるのか。

 そして、初回からずっと、浅井たちを心から憎んでいたはずの市長は、いきなりいい人になる。
 なんなんだ、一体...。

 こんな支離滅裂すぎる展開では、もはや、感動の余地はない。
 大きな感動を引き起こそうとして、全くおかしなことになっている。
 これを見て感動する人はいないだろう。
 もしいるとしたら、1分前のことすら記憶できない、相当バカな人だろう。


○ 第7話(最終話)

 最終話もおかしい。

 一番おかしいのは、作りかけになった道で、浅井や村人、市長たちが、人力で工事を始めるところである。

 自分は、この場面を見て、唖然とした。

 人力で工事をするなど、人件費の大幅な無駄遣いである。
 ブルドーザーでやればすぐに済むことでも、人間がやれば、ものすごく時間もかかる。そんなことをしたら、一体何倍の費用がかかると思っているのか。

 市の職員や市長には、物事を判断したり、もっと高いレベルでの行動が求められる。何らかの方法でどこかに働きかけたり、ブルドーザーを持つ業者を安い値段で探したり、いろいろある。
 こんなところで無意味な作業をさせるくらい本来の仕事に余裕があるのなら、その人件費は丸ごと削減した方がいい。

 こんなバカな展開を見て、感動する人などいるとはとても思えない。


○ 最後に

 このドラマは、題材的には非常にいいと思うので、作り方によっては、相当感動的でいいドラマになったかもしれない。

 だが、あまりにも無理がありすぎるストーリーで、とてもじゃないが、感動などしていられない。

 そして、村おこしの政策が、いくらなんでも無理がありすぎて、むしろ、限界集落を盛り上げるというのは不可能なんだなあと実感させられてしまった。

 こんなおかしなストーリーに、内部から異を唱える者は誰もいなかったのだろうか?

 いずれにしても、制作陣には、よくよく反省してもらいたい。


(完)

光太
公開 2016年2月21日

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